
日本は小さな国ですが、南北に広く、山や海に隔てられているため、地域ごとに独自の文化を持っています。異なる食文化を持つため、それぞれの地域の料理と一緒に飲まれる日本酒も、その地域に住む人たちの味覚が反映されています。日本酒は日本国内でも地域ごとに発展を遂げてきました。
都道府県ごとの酒蔵の数
日本には約1700軒の酒蔵があります(2020年のデータ)。この数は酒造免許を持っているこの数で、このデータのなかには、免許はありながら日本酒を作っていない蔵や、数年に一回造る蔵など市場に出ないもの、または食品会社や大学などでアルコールが生じる試験醸造用の免許も含みます。

都道府県ごと酒蔵数
47都道府県中 上位10位
- 新潟県 98軒
- 兵庫県 91軒
- 長野県 85軒
- 福岡県 69軒
- 福島県 66軒
- 広島県 58軒
- 山形県 55軒
- 岐阜県 54軒
- 愛知県 52軒
- 京都府 52軒
※2020年データ
一位 新潟県

一位の「新潟県」は、かつて広大な低湿地が広がっていて稲作にとって劣悪な環境でした。150年以上前に移住した人たちの多大な努力によって、土地の改良と稲の苗の開発が進められ、日本一の米どころへと発展。冬は雪が深く積もるため、多くの美しい雪解け水が生まれ、稲作に必要な豊富な水資源があります。朝晩の寒暖差も大きいため、良い米が育つ場所です。それに伴い、日本酒づくりも盛んになりました。
二位 兵庫県

二位の「兵庫県」は、「灘エリア」という内海(瀬戸内海)側のエリアがもっとも有名な酒造りの場所です。すぐ裏手に急な山があり、目の前には海があります。ここを流れる川の急流を利用して、150年以上前に水車式の精米機が発達したことで、おいしい日本酒を大量に造ることに成功した地域です。また目の前の海から船を出して、当時の都であり大消費地である「江戸」に酒を運びやすかったのも酒蔵が増えた理由です。
三位 長野県

三位の「長野県」は、日本の内陸に位置し、3000m以上の山脈があり、2000m以上の山があちこちにあります。そのため流通が容易ではなく、地域ごとで飲むための日本酒をつくる酒蔵が誕生しました。1800年代には、長野県だけで1000を超える酒蔵あったらしい。
都道府県ごと酒蔵数
47都道府県中 下位3位
- 沖 縄県 4軒
- 宮 崎県 2軒
- 鹿児島県 2軒
※2020年データ
沖縄県は、琉球王国時代に東南アジアから伝わってきた伝わってきた酒造り文化が発達していて、今でも「泡盛(あわもり)」が盛んです。宮崎県と鹿児島県は、焼酎が多く造られているため、日本酒醸造所の数は少ないです。
独自の酵母・酒米の開発など。県単位の進化

日本酒はかつて再現性が低く、賭けのような側面がありました。そこで「醸造に関する科学、技術の研究とその振興を図り、もって醸造業の進歩発展に資すること」を目的として1906年に、公益財団法人日本醸造協会が設立されました。さまざまな蔵で発見された特に優秀な酵母は、日本醸造協会によって維持管理され、酒蔵に販売しています。 さらに現在では都道府県ごとに「醸造試験センター」「食品工業技術センター」などが設置され、日本酒専用の酒米の開発や、酵母の研究、日本酒造技術の向上をはかる取り組みがおこなわれています。 毎年おこなわれる「全国新酒鑑評会」は、日本酒の順位づけではなく、ブラインドテイスティングによってより優秀であると認められた日本酒に「金賞」が与えられます。1つずつの酒蔵が鍛錬を重ねるのはもちろんのこと、都道府県ごとに、より多くの酒蔵が金賞を受賞するように酒蔵をあらゆる面でサポートしています。酵母や米の詳しい情報については、今度お伝えします!
まとめ

日本中、または世界中の人々が日本酒を飲むようになって、酒蔵で働く人たちの市場に対する視野も広がり、酒蔵ごとのオリジナリティある日本酒が増えています。 しかし今でも酒蔵の周りの人たちが一番の得意先、ということも多く、各地のルーツが深く反映されています。 日本では、寒い地方では、塩漬けなど保存食をつくるため、味が濃い食べ物が多く食べられるため、そこに住む人の味覚も塩っ気のあるものを求めるようになります。そうすると食べ物と一緒にテーブルに並ぶ地元の日本酒は、旨味がたっぷりあって、甘みもある濃い日本酒になる傾向があります。反対に海沿いの日本酒は、新鮮な刺身などと合わせるので、ドライでスッキリとした味わいが多いようです。単純な地理だけでなく、昔その地を治めた武将の出身地(彼が好きな味)や、特産品の味わいにも日本酒は影響を受けています。 気に入った日本酒がもしあれば、その地域の成り立ちを深く知ってみてください。その日本酒を理解することで、よりおいしく感じるでしょう。
この記事を書いてくれた日本酒人
関 友美さん

日本の文化や伝統を世界に伝えるライター。日本酒や和食、伝統文化をテーマにした執筆を得意とし、その文章は多くの読者に日本の魅力を伝えています。資格を活かし、日本酒や発酵食品に関する深い知識を持つ関さんは、その専門性を活かして様々なプロジェクトにも携わっています。審査員としての経験から、日本酒の品質や特徴を深く理解し、その魅力を的確に伝える力にも定評のある日本酒界屈指のライターさんです!
【保有資格】
・唎酒師、日本酒品質鑑定士(SSI認定)
・発酵食品ソムリエ
・シードルマスター(シードルマスター協会認定)
【審査員実績】
・MONACO SAKE AWARD 2024
・全国燗酒コンテスト 2024
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